NHKスペシャル 特集ドラマ『最後の戦犯』2008/12/07 21:00〜22:30 NHK総合テレビ


大友良英さんが音楽をやっているというので見てしまった。見てしまった、というのは普段テレビなど見ないので、テレビを発掘するところから始めなければならなかったからだ。いや、それならもっと積極的な言い方をしなくちゃいけないような気がするけど、いいんだ。


NHKのこの手のドラマは、役者さんをアホにしないので好きだ。つまりその役者さんが他の場面すなわち日常生活とか夕刊紙とかでどのようにもてはやされているとか干されているとか落ちぶれているとかそういうこととは無関係に製作されている、ということだ。


物語は終戦五日前に米軍の捕虜を上官の命令により処刑した主人公とその家族が戦後の一時期をどのように過ごさざるを得なかったか、というもの。ポイントは、この主人公が実在人物をモデルとしていて、その人が膨大な手記を残していた、ということだ。その手記と、それを元にした小説(?:未確認)をもとに丁寧に作られている。


あらすじなどを知りたい方は他を参照されたし。


こういうドラマはすでにたくさん見てきているので、あまり書くことはないのだが、進駐軍に対する突き放した、ほとんど他者のような描き方に対して、警察官に対する描き方が少し不公平ではないかと思った。なにか、突出して悪者にされているような気がした。彼らだっていわば「処刑」を行った主人公と立場は意外と近いのではないのか。一時間半のドラマにそこまで求めるのは酷だろうか。酷かもしれない。


さて、大友良英さんの音楽だけど、去年の『鬼太郎』とはずいぶん違った感じに仕上がっていた。というか、おそらくかなり注意して効いていなければ音楽があったことにさえ気付かなかったかもしれないというほど、限りなく背後の音楽であったように思えた。


でも、もしあの音楽がなかったら、ぜんぜん印象が変わっていたはずなのだ。


わたしは映画やドラマの音楽というのが苦手なのだが、これで通るのならば世の中すべての映像に付ける音楽を大友さんにお願いしたいくらいだ。カヒミさんの声が、ほとんど他の楽音とシームレスになるあたりは、泣きたくなるほど美しいものでありました。


うん、これは単なる感想です。批評を書きたくないということでもなくて、批評をする能力がないということもあるのだけど、それとは別に、何となく最近批評というものがとても可愛そうな立場にあるような気がして、できれば救ってあげたいのだけど、いまはちょっと無理というか。


批評って、もちろん作品をくさすことではなくて、指針を示すことなんだろうと思うのだ。ヴァレリーがどこかに書いていたような気がするんだけど、あなたにお薦めの本はこれですよと提示すること、ただしそれは直感的なものではなくて、きちんと読み解いてみせてやることによって始めてなされ得るのだ、たぶん。


うーむ、偉そうなことを書いてしまった。グレッチで打って。