about こぐまレンサ part 3

生きているといろいろなことがあって、この続きを書きたい、書かなきゃと思いながらもからだ壊したりからだ壊したりからだ壊したり思いがけないことがさらに重なり、数日前からようやく再読、夕べ読み終えた。


泣けました。一度目はなんというか打ちのめされたのだけど、二度目は泣けました。泣けましたって書くとばかっぽいけど、ばかだからいいのです。もう自分を取り繕っても仕方のないところにまで来てしまったのです。


別な言い方をすれば、歳を取ったということ。


さて、前回の予告で「いくつかの反復するイメージ」というようなことを書いたのだけど、再読するとたぶん読み切れていない分も含めて、蜘蛛の巣のようにいろいろなイメージが絡み合っていて、もし本当にきちんと読むならば、チチェ語をある程度解読もしくは再構築しなくてはならないだろうし、年表みたいなものを作らねばならないだろうと思う。年表は必須かもしれない。


でも今回は敢えてそのどちらもしない。ひとつにはわたしの体力的な問題があり、もうひとつは、それはわたしの仕事ではないと思うからだ。


以下、ネタバレするので注意されたし。


前回念頭に置いていた「反復するイメージ」とは、誰かが車の前に飛び出す、というものだ。再読したら、それは三箇所しかなかった。もっと多いような気がしていたのに。


ひとつめは、「Sight4 蛙の肉」。ナルシストで何人も女がいるような美形の青年に不細工な少女が恋をするというもの。青年は鏡のような光を反射するものを見るたびに自分の姿を確認する作業をやめられない。セックスしているときでさえ(当然相手の女は怒る:「自分とHしてるんじゃないんだからさー!」)。


醜形の少女は青年につきまとったあげく、路上の蛙を潰した足で思い切り蹴られる。そこへコグマが現れ、潰れた蛙を見て路上に座り込んでいた少に、「こわれる前は美しかったか!? 見にくかったか!?」と尋ねるが、少女は答えるどころではない。コグマはそういうことが分からないのでけちんぼといって立ち去る。


少女はカフェでアルバイトをするようになった。最初は接客をしていたが、時給を上げられ、奥の仕事に回される。そこで丹念にスプーンを磨き上げる。アルバイト仲間からはろくな噂をされない。


そこへあの美形の青年が彼女を連れてやってくる。少女は突然厨房を出て、彼らのいるテーブルに料理を運ぶ。本来彼が食べるはずだったスパゲティは、彼が拒否することによって彼女が食べることになる。彼は彼女が食べるところを見るのだが、些細なところに醜さを見出してしまい、耐え難くなる。


そのときテーブルに置かれたスプーンに目が留まる。醜形の少女が磨き上げたスプーンだ。当然なんでもよく写る。いつもの癖で青年はスプーンを手に持ち自分の顔を映す。


しかしそこに映ったのは彼としてはあり得ないほどの歪んだ彼の顔だった。スプーンは平面ではないのだから当然なのだが、彼はそれに衝撃を受ける、というよりもあり得ないものを見てしまったのだ。驚愕して立ち上がるが、そこはテラス席で、垣根を越えて車道に転げ出てしまう。そこへタンクローリーが――


醜形の少女は押しつぶされた彼の姿を見てこう呟く。「なーんだ、潰れちゃったらそんなに変わらないのね 蛙も拓美くんも……」(「拓美」とは何とも皮肉な名前だ)。


二番目は、と言いたいところだけど、今日はここまで。