ネオブライス「モッドモーリー」


普通のブライスファンあるいはマニアがどのくらいのブライスを所有しているのか知らないが、うちにはなんとなくたくさんいる。ということに気付いたのが三年位前。それ以後、ブライスが増えないように心を配ってきたし、発売されるブライスも、こちらの気持ちに合わないものがほとんどで、あとは素晴らしいカスタマイズされたブライスという選択もあるのだが、できのいいものだと恐ろしいほど高い。あっという間に数万円は行ってしまう。特にブライスにはまって間もない頃が危険だ。一体あたり約一万円以上、限定モデルだとその二倍あるいは三倍なんていうこともある。二十体なんてあっという間に揃ってしまうが、それはすなわち二十万円の出費に他ならない。


かくいうわたくしも何十万か費やしてきた口だ。ブライスについては公式サイトを参照していただくとして、もともとはアメリカで三十数年前に一年間だけ売られたほとんど幻の着せ替え人形だ。日本にもわずかに入ってきたというのをどこかで読んだ記憶がある。なぜ一年間しか売られなかったのかは公式サイトに譲るとして、日本におけるいまのブライスの潮流というのがあるとするなら、その源はおそらくパルコの宣伝によるものだろう。わたしはあれでいっぺんに脳のどこかをやられてしまった。それから復刻版のブライスが製造販売されることになり、でもいちばん最初に発売された二体は「ヴィンテージ(1972年に発売されたものをそう呼ぶ)」と比較してどうのこうのと散々文句が出たり、最初はリカちゃんのボディをそのまま使っていたので不完全だとか、肌がてかっているとか、毛量が少なくてハゲて見えるとか散々に叩かれた。そのとき発売されたのが、パルコ限定版と、のちに「モンドリアンモンドリアンの絵の模様の服を着ていたからだろう)」と呼ばれるようになったものだった。


批判を受けて、CWC(クロス・ワールド・コネクションズ)あるいはタカラは、今度はマット肌で髪の毛がストレートなブライスを出してきたが、今度はマット過ぎると批判が出た。


少し考えればわかりそうなものだが、三十数年前の着せ替え人形の肌の状態がオリジナルを保っているわけもなく、また、実物を手に取ればわかるのだが(当然わたしも持っている)、いま現在売られているブライスと比較したらできは良くない。接着剤ははみ出しているし、部品どうしの接合も今ひとつだったりする。


ただし恐ろしいことに、三十数年の年月を経るうちにある種のオーラを放つようになってしまった。わたしの脳みそがいちばんイカレていた頃は、ブライスの《霊魂》が何度かわたしを苦しめたりした。まあ、そういうものだ、人形というのは。


ちなみにうちにいる「ヴィンテージ・ブライス」はアメリカからやってきたのだが、いやもちろんほとんどのヴィンテージはそうなのだが、これは直接買い付けた。eBayで。十万円くらい。我ながら狂っていると思いながらも、ヴィンテージの一体も持っていないのではマニアとはいえないだろうと勝手に思っていたのだ。


送ってきてくれた人は文面も気さくでいい人そうだったのだけど、なぜか木の板に描かれた犬の絵がいっしょに送られてきた。確かにその絵はオークションの写真にも一緒に写っていた。ただ、なんともまがまがしいオーラを発しているような気がしてならなくて、いつかお焚き上げで焼いてもらおうかと思っている。幽霊など怖くないわたしが、昼間にひとりで見るのが嫌なくらいには、怖い。


ここまでが前置きだ。ちなみにこのブログのトップの写真もブライスだ。わたしは自分の所有しているブライスにはすべて「ブライス」と命名している。区別するときは商品化されたときの名前を使う。ヴィンテージはヴィンちゃん。これはかつてGroovisionsがChappieという「着替えることによって何者にもなれる」というコンセプトがとても気に入っているからでもある。実際、ブライスのカスタマイザーさんによっては男の子のブライスを作っていたりもするのだが、そういう子は人気が高くてなかなか手が出ない。


で、CWC─タカラのオリジナル・ブライスで、久しぶりに好きな感じの子が出ることになったので、ついお迎えしてしまうことになった。ああ、だんだん人形系の用語が頻出してきている。わたしの頭がおかしいと思うあなたは正常だ。


こんな巨大頭の人形のどこがいいのか。そう思っているうちは問題ない。以前男の子の友だちを部屋に上げたことがあったのだが、ブライスを見て飛び退った。「こえー」というのだ。けしからんと思うが、まあ仕方がないかもしれないが、でもカワイイものはカワイイのだ。これは絶対的な真理である。誰にも覆せない。


十二月の半ば頃にやってくるのだが、すぐには箱の中から出してあげられない。家の中が片付いていないからだ。先日書いたレコードプレーヤーは無事届いてきた。だから少し困っている。あといったい何を処分したらいいのか。ブライスたちのためにも真剣に考えてやらねばなるまい。